L-15:時計遺伝子阻害薬による線維細胞制御とがん治療への応用

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徳島大学シーズ<L-15>:ライフサイエンス、創薬 sdgs-03
 

時計遺伝子阻害薬による線維細胞制御とがん治療への応用
― 免疫療法の耐性を克服する新たな治療開発を目指す ―

三橋 惇志 特任講師 大学院医歯薬学研究部 医学域 医科学部門 内科系
呼吸器?膠原病内科学分野
西岡 安彦 教授 大学院医歯薬学研究部 医学域 医科学部門 内科系
呼吸器?膠原病内科学分野
キーワード 時計遺伝子、fibrocyte、がん免疫療法、バイオマーカー
研究室URL http://www.sannai.umin.jp/
研究の概要
<がん間質が免疫療法の治療効果に寄与する>
 線維細胞(fibrocyte)はコラーゲン産生能を有する血球系細胞として、臓器線維化への重要性が知られてきたが、がんにおける機能は不明な点が多い。免疫チェックポイント阻害薬等の免疫療法は、現在のがん治療の中心を担っている。その一方で、がん関連線維芽細胞を中心としたがん間質により免疫細胞浸潤が阻害され、治療抵抗性に至る免疫排除が課題となっている。本研究ではこのがん間質を制御するfibrocyteの機能に注目した。

<技術課題 fibrocyteの分化を制御する機序の解明>
 Fibrocyteは組織からの分離が困難とされていたが、表面マーカー同定により腫瘍からの単離手法を独自に確立しており、この細胞が線維芽細胞に分化することを明らかにした。さらに、このfibrocyte分化を制御する機序として、日内変動を司ることで知られる時計遺伝子群を同定した。時計遺伝子の機能を抑制する製剤は既に開発が進んでいるが、がん免疫に対する応用はなされておらず、免疫排除を克服する新規治療としての展開を目指す。
 
想定される用途と製品化?事業化イメージ

<概日リズム周期延長剤によるfibrocyte分化阻害と免疫療法耐性化の克服>
 腫瘍内からfibrocyteを分離する技術により、線維芽細胞への分化を制御する機序や製剤のスクリーニングが可能となった。実例として、既存の時計遺伝子阻害薬KL001が線維細胞分化を抑制し、マウスモデルで抗腫瘍効果と免疫排除を克服する作用を有することを確認している。時計遺伝子阻害薬を中心としたfibrocyte分化抑制作用を有する薬剤を免疫療法と併用することで、耐性化を克服する新たながん治療を開発していく。
 

L-15-1.腫瘍からfibrocyte分離 L-15-2.時計遺伝子阻害による免疫排除の克服
図1.腫瘍からのfibrocyte分離 図2.時計遺伝子阻害による免疫排除の克服
特許 特願2024-060958 「概日リズム周期延長剤を含む組成物、及びその利用」
論文 Mitsuhashi A, Koyama K, Ogino H, Afroj T, Nguyen NT, Yoneda H, Otsuka K, Sugimoto M, Kondoh O, Nokihara H, Hanibuchi M, Takizawa H, Shinohara T, Nishioka Y. Identification of fibrocyte cluster in tumors reveals the role in antitumor immunity by PD-L1 blockade. Cell Rep 42(3):112162, 2023. doi: 10.1016/j.celrep.2023.112162.
Mitsuhashi A, Koyama K, Ogino H, Matsuo R, Nguyen NT, Yabuki Y, Ozaki R, Tsukazaki Y, Morita Y, Yoshida A, Murakami K, Sato S, Kawano H, Nokihara H, Inagaki Y, Shinohara T, Hanibuchi M, Takizawa H, Nishioka Y. Clock pathway inhibitor overcomes tumor immune-exclusion via regulation of fibrocyte differentiation. NPJ Precis Oncol 9(1):274, 2025.

 

お問合せ先

徳島大学 研究支援?産官学連携センター
TEL:088-656-7592
E-mail:rac-info@tokushima-u.ac.jp

最終更新日:2025年10月30日

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